ロサンゼルス – サンフランシスコ小売視察ツアー
小売の未来が知りたいならアメリカを見るべきだということで、データコム社が主催する米国視察ツアーに参加して参りました。ロサンゼルスからサンフランシスコ近郊のスーパーマーケットを中心に1週間で約30店舗弱の小売店をまわってきました。
全般的な感想としては、アメリカのスーパーマーケットはそれぞれが品揃えや価格、店舗内装デザイン(什器やポップ、照明、冷蔵設備)など創意工夫し、創業者の想いを受け継ぎながら自社の個性を出しているなと感じました。色とりどりの惣菜やOlive Bar(サラダバーのサラダがオリーブになったもの)、専属アーティストが描いているというポップなど多くの店内は見ていてワクワクしました。働いている人の多くはフレンドリーで仕事に誇りを持って取り組んでいるようです。100種類以上あるワインやクラフトビールから僕の好みの商品選びを手伝ってくれたり、店内ですれ違う際にも声をかけ常に関心を持ってくれているということが嬉しかったです。
以下に今回僕らが訪問し、是非見て欲しいと思ったお店をリストします。
今、見るべきスーパーマーケット
- Andronico’s Community Markets(http://www.andronicos.com/)
- Berkley Bowl (http://www.berkeleybowl.com/)
- Nugget Markets (https://www.nuggetmarket.com/)
- Rainbow Grocery (http://www.rainbow.coop/)
- Sprouts Farmers Market (https://www.sprouts.com/)
- Trader Joe’s (http://www.traderjoes.com/)
- Whole Foods Market (http://www.wholefoodsmarket.com/)
また上記のように比較的高品質のスーパーマーケットでは、商品を以下のように分類しているケースが目立ちました。
オーガニック(有機)、ローカル(地元産)、ビーガン(完全ベジタリアン)
なかでもホールフーズマーケットでは、独自の基準で精肉を5つのグレードに分類し、鮮魚にも健全な環境で養殖が行われているかなどのチェック項目を持ってラベリングしているということで、自社が販売する製品に対する責任を重く考えた経営を行っていることが消費者にも伝わり、価格ではない魅力を訴求することに成功しています。
ただそうなるとWhole Foods, Whole Paycheckという嫌味も言われているようで、同社はそのイメージを覆すため努力しているようです。同社のPB商品ブランドである「365」の専門ストアを今年オープンする予定です。
進むオムニチャネル
また今回の視察の中でオムニチャネルに関するセミナーがあり、アメリカでのオムニチャネル利用状況の紹介がありました。
アメリカは現在消費の中心がミレニアム世代※1となっており、そのため小売の現場でもインターネット技術が自然に取り込まれています。例えばセミナー中に紹介されたものや視察の現場で目撃した例としては以下のものがありました。
※1 ミレニアム世代(80~2000年生まれ)は、物心ついたころにはITデバイスやインターネットが普及していた「デジタルネイティブ」である。派手な消費は好まず、従来型の広告には影響されず、社会奉仕やボランティアに積極的。より詳しくはこちらから
- スーパーマーケットで購入した商品を自宅に宅配する方法としてAmazon NowやInstacart(インスタカート)※2 が利用されている。
- スマートフォンで店舗の在庫を確認してから訪問する。(Macy’sにて)
- ウォルマートでは、商品を実店舗で購入された後に他店の価格を調査し、差額をスマホアプリ上でキャッシュバックしている。
- アマゾンは、アマゾンダッシュボタンやエコーなどの新しいデバイスを提供し、商品をあらゆる場所で注文できるようにしつつある
※2 Instacart(インスタカート)は、スマホアプリで注文した食料品を提携するスーパーなら、スーパーをまたいで買い物をしてくれ、1時間で配達してくれるデリバリーサービス。
驚くのはこれらの技術が生活に見事に溶けこみ、利用者もサービス提供者もそれをすぐに当たり前のものとして受け入れているということです。勿論導入前にはどの企業でも様々な心配点、懸念事項が会議で検討されたということですが、導入後にはそれは当たり前になっているようです。
日本では消費者の中心、小売店の最重要顧客は若者世代ではなくシニア世代なので、こういったIT化の流れはアメリカよりはゆっくり進むはずですが、それでもこのオムニチャネル化は若者世代の専売特許ではなく、シニア世代にとってもより生活を便利にしてくれる側面を多く(宅配代行やワンプッシュで注文等)持つため、日本でも数年後にはこの方向に大きくシフトしているのはまず間違いないのではないでしょうか。
分析の現場で使われる世代について
これは私がふと思ったことなのですが、日本では消費者の分析を行う際に、年齢でセグメントが行われるケースが多いのですが(ヤング世代、シニア世代)、アメリカや中国は生まれた年代による傾向でまとめてセグメントしています。
アメリカの世代はベビーブーム世代、ジェネレーションX、ジェネレーションY、ミレニアム世代などで、中国では「80後(バーリンホウ)」「90後(ジョウリンホウ)」などと呼ばれます。
日本でもゆとり世代、さとり世代とかいう言葉はありますが、これは小売の現場での消費分析には使われてはいないのではないでしょうか。生まれた世代によるセグメント管理のほうが、今後の消費行動を追跡しながら分析する際には役に立ちそうなので、日本でももっと活用してもよいのかなと思いました。